検索エンジンで来られた方は「トップページ」から他の不思議もご覧下さい(CRC JAPAN)

謎の頭蓋骨の真実

担当:長官
宇宙人!?謎の頭蓋骨の真実に迫る!!
このページに書かれた内容は 自身の経験に基づくものであり、 内容を保障するものではありませんので、 内容を転載される方などは注意頂き、連絡をお願いしますm(_ _)m
序章

オーパーツ、謎の遺跡など世界各地で たった一つの驚くべき発見によって様々な噂が飛び交い、 世間をにぎわす事がある。 今回は、その中でも宇宙人と関係しているとも噂される 頭蓋骨の正体を追ってゆく。 私は人類学、解剖学、法医学などを学び、 人体解剖なども行ったが、特に興味を持って 学んでいたのが骨学で、骨からの性差・年齢鑑別などを経験した。 今回は、頭蓋骨の検証ということで、 概要を紹介した「骨が語る真実」などを参照したうえで 読んでいただければあなた自身の知識で謎の真実に近づけるに違いない…

1章.頭蓋骨の基礎知識

謎に迫る前に、頭蓋骨、骨に関する基礎知識に触れておこう。 骨といえばカルシウムを連想されると思うが、 生体を正常に保つ上でも血液中のカルシウム濃度は重要である。 カルシウムが足りなければ骨が脱灰されて血中カルシウム濃度が上昇する。 また、カルシウム(イオンも含む)は、筋肉の収縮など様々な 働きがある。骨は他にも生体防御などの働きがあり、 特に頭蓋骨は柔らかい脳を保護するために必要不可欠である。 骨が形成されるに至ったのは「生物進化」でも触れたように、 血中カルシウム濃度を維持したり、 進化の段階でイクチオステガが水中から陸上に 上がった時に気圧によって肺が潰れないようにする役割などがある。 よく赤ちゃんの頭を触って「やわらかい」という言葉を聞く事がある。 これは骨の骨化の様式とも関係している (頭蓋底などは軟骨性骨化だが、頭蓋骨の大部分は膜性骨化)、 また、小さい子供では頭蓋骨の骨と骨の間に骨が無い部分があり(泉門)、 成長とともに閉鎖するが、先天異常などで早く閉鎖したり、個人差がある。 しかし、この頭蓋骨と頭蓋骨の縫合の閉鎖の程度はしばしば年齢推定の参考にされる。

2章.謎の頭蓋骨

では、実際にミステリーとして注目を浴びる頭蓋骨をいくつか紹介する。 前に紹介した「骨が語る真実」とあなたの想像力で実際に謎解きに挑戦してみて欲しい。



3章.ミステリアスな出土物と捏造

オーパーツ」や、骨などが出土したり、発見された 場合には常に捏造の可能性があることを考えなければならない。 人類学史上、捏造として有名なのは新種と言われた ピルトダウン人をめぐるものである。これは一般人による噂ではなく、 学問上、支持されていたもので後にオラウータンの骨が 細工されたものであったことが分かり、なぜ気づかなかったのかと議論になった。 このように専門家であっても巧妙な細工が施されたものは 誤った"回答"を出してしまう可能性があることを知らなければならない。 年齢推定においても頭蓋骨だけが発見された場合には 95パーセント程度が推定できるが、 世界中、どんなに優れた法医学、人類学者であっても 頭蓋骨だけで1000体を全て形態学的な肉眼だけで100パーセント 完全に判断することは不可能である。 それは、重複する範囲があるためで、近年は男女の頭蓋骨の 差異が少なくなっており、形態的な性差判別が難しくなってきている。 また、様々な動物の骨を組み合わせて作った 作品もしばしばみられる。これは捏造目的ではなく、 古代の人々が装飾、宗教的な目的などで作った場合なども含まれる。

4章.ヒトとサルの違い

キリスト圏の創造論者が多い アメリカなどでは、ダーウィンの進化論を支持していない 人々は現在においても多数存在しているが、 系統発生学的な根拠や、DNAなどから ヒトとチンパンジーの遺伝的な違いは数パーセントである ことが分かっており、科学的には極めて近いことが明らかになっている。 しかし、頭蓋骨などに関しては幾つかの異なる部分が あり、まず全体的な概観も異なり、 一般的に言う額(ひたい)は、サルの方が傾斜が急で、 これはヒトに至るまでの進化で脳の前頭葉の発達によるものであると考えられる (ヒトの男女の性別判定にも有用)。 また、ヒトには鼻稜があり、顔面部には差異が多く見られる。 ヒトとサルの違いとして直立二足歩行による頭蓋骨の下の部分(頭蓋底)の 大後頭の位置も異なっている。 下顎においては、咀嚼筋の一つである咬筋が 停止する咬筋粗面なども異なっており、 ヒトでは下顎の前の部分(オトガイ部)の発達がみられる。 歯列においては、サルはU字型で、切歯(理科では門歯ともいう)と 犬歯の間に空隙がみられる。 このようにサルとヒトでは頭蓋骨のみを比較しても幾つかの判別上のポイントがみられる。

5章.古代人と頭蓋骨

骨、とりわけ頭蓋骨は世界各地で神秘的な対象として みられることがあり、勝者は戦って勝った相手の 頭蓋骨を力の象徴として扱う場合もあった。 また、戦いにおいては棍棒など物理的な攻撃が 多かったので、しばしば傷を負って帰ってくる場合があった。 そのような場合には、南米などでは古代から 頭蓋骨に対する治療が行われていたことが分かる。 頭蓋骨には人工的に処置された形跡があり、 その後、周囲の骨が再生している様子が伺える ものが幾つもある。医薬品が少ない時代には 感染症などによって成功率は現在と比べて 低いと考えられるが、それでも豊かな 植物から様々な薬の成分を見出していたことが想像出来る。 実際、現在利用されている薬は植物由来のものも多い。 (当サイト内参考ページ「毒と薬の科学」)、 古代人の知恵としてコカの葉(コカイン)を用いて 麻酔を行っていた可能性も考えられる。 このように古代人と頭蓋骨は密接な関係がみられるのである。

最終章.謎の真実と文化・疾病

今回は謎の頭蓋骨をめぐって簡単に紹介してきた。 掲載した写真については今までの情報を元に考えて ぜひ謎解きを楽しんで欲しい。 先ほど紹介したように1枚の写真から判定することは困難であるが、 顔面部はヒトに近い骨格といって良いだろう。 特に注目して欲しいのは下顎部で、 下顎の角部の部分はヒトとほとんど差異がないと考えられる。 このようにこの骨格は頭蓋骨が大きいものの、 ヒトの骨格である可能性が考えられる(現在人とは異なる部分もある)、 そのため、何かの影響でこのようになったと考えることが 出来るが、考えるうえで重要な一つが疾病との関係である。 遺伝子異常などでは特徴的な骨格の特徴がみられ、 古代人における、このような研究分野は古病理学といわれている。 特に外傷、腫瘍、結核や梅毒などの感染症は骨格に影響を 及ぼす場合があるので重要であり、全身的な Histiocytosis X、軟骨無形成症、水頭症などは鑑別によって診断されることがある。 また、当時の風習などを考慮して考えることも必要で、 骨格や成長に影響を及ぼす風習としては一般的に 首長族と呼ばれている民族などが有名である。 この民族では成長に伴ってリングをくびに重ねていき、 結果的に首が長くなる。 このように、成長の段階で持続的な影響を与えることによって 骨格の変形が観察されることがある。 今回出土した当時の風習をみるとシャーマンなどが 活躍しており、宗教的な理由から、布などで変形 させたと考えられる。 今回紹介した写真以外にも様々な謎の頭蓋骨が存在するが、 中には宇宙人や神と関連して考える人々も数多くいる。 個人的にこの考えについては否定するつもりは無いが、 最後に今回はこの言葉で締めくくりたい。 古代人は神や、限りなく続く未知の宇宙に日々思いをめぐらせ、 現代人以上に豊かな感性があったということを。
当サイトの関連ページもお楽しみ下さい

オーパーツの謎」 「世界の猿人」 「ナスカの地上絵の謎
人体自然発火現象の謎」 「法医学と人体のミステリー」 「法歯学」 「法医昆虫学
プロファイリング」 「法医学の窓口」 「ゲノムと生物学」 「クレオパトラ」 「ミイラ

CRC長官オススメの関連書籍
アトラス頭蓋骨学 内容を見て一瞬、 海外の有名な邦訳書と思ってしまったほど 分かりやすく、内容が充実している書籍。 頭蓋骨に興味がある人や、 人類学者、または医学の脳神経外科に携わる人々まで 幅広い人々のために書かれた本です。
骨は語る 人類学教室の教授による ネアンデルタール人の人類学の研究や、 人類学を利用して殺人事件に迫る体験を元に書かれた邦訳書。
骨が語る
〜スケルトン探偵の報告書〜
骨に関する進化、年齢推定などが紹介されており、 また、骨から分かる疾病・古病理学にも触れられている読み物的な書籍。
人間史をたどる―自然人類学入門 人類学が読みやすく紹介されており、 入門書・生涯学習など様々な目的で利用できる。 また、骨からの年齢・性別推定などにも触れている。
図説 歯の解剖学 歯に関する解剖学的な特徴や、 比較解剖学、歯の人類学など広範囲に扱っています。


トップページへ戻る