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ゲノムと生物学

担当:長官
超常現象の謎を解くために必要な基礎生物学!!
序章

生物学は自然科学において 「化学」 「物理」とともに 主要な科学の一つであり、小学・中学などでも授業が行われている。 しかし、私自身が塾で講義などを行っていると苦手意識を 持っている生徒が多数を占めている。 受験で求められる生物は確かに難しい内容も含まれるが、 今回は基礎的な生物学の基礎を扱っていく。 しかし、基礎といってもこれだけは覚えておいて欲しい。 このページを完全に理解した後は 高校で中途半端に生物を履修した人より、 「生物学の基礎知識と概念を説明できるようになっている」ということを。

全てを構成する細胞(Cell)


動物、植物など生命を構成するものは全て細胞(Cell)から成り立っている (ウイルスは細胞構造が無く、生物かどうかは議論が分かれている)。 例えば私たちは60兆個の細胞から成り立っており、 細胞同士が協力して生命を営んでいる多細胞生物である。 細胞の登場については「生物進化」のページで解説したが、 一つの細胞からなる単細胞生物も存在する。 この細胞を発見したのは物理学の「フックの法則」でも知られる ロバート・フックであり、コルクを顕微鏡で観察して発見した。 その後、生命は細胞から成り立っているという細胞説が 提唱されたが、動物はシュワン、植物についてはシュライデンが発表している。

細胞の構造

では、実際に細胞の構造を見ていこう。 植物と動物の細胞では構造が若干異なり、 植物は細胞膜の一番外側に丈夫な細胞壁、光合成を行う葉緑体、液胞が特徴的な 構造である。細胞の中で一番中心的な働きをするのは核である。 核には遺伝情報を司るDNAが含まれている。 細胞の中に含まれる核以外のものは細胞小器官とよばれており、 エネルギーを産生するミトコンドリア、細胞の中で 作られた物質を分泌するゴルジ体などいろいろなものがある。 ミトコンドリアは子供は親の女性の遺伝子のみを受け継ぐので、 人類の進化の謎を解いたり、親子判定、事件の科学捜査など「法医学」的にも重要である。

様々な細胞

最初に紹介したように植物や動物あっても生物は細胞から成り立っている。 特にヒトは皮膚、神経、骨などは様々な役割を果たす細胞から成り立っている。 それぞれの細胞は元をたどれば卵子と精子によって誕生した たった一つの受精卵が分裂したものである。 そのたった一つの細胞が分裂し、60兆個にもなるのは驚きである。 近年は再生医療で、 全ての細胞になりえるES細胞・幹細胞(stem cell)が注目を浴びている。 このように、ある細胞が骨細胞など特徴的な細胞になることを分化と呼んでいる。 前章で紹介した遺伝情報を含む核は、私たちヒトは核膜によって覆われており、 真核生物(細胞)とも呼ばれるがあるが、細菌やラン藻の細胞などは覆われておらず、 原核生物(細胞)と呼ばれる。

ATP、代謝、酵素

体を動かしたりするためにはエネルギーが必要で、 植物は光合成をし、 動物は食べることによってエネルギーを得ている。 個体を構成する多種多様な細胞が調和・協力し、生命を維持するには ヨーロッパの様々な国々が共通のユーロを用いている のと同様にエネルギーを共通化することが必要である。 それがATP(アデノシン三リン酸)であり、 他に様々な物質なども関与し、代謝が行われている。 そして、これらの様々な反応を円滑に行うために 酵素(生体触媒)が存在している。 物質が化学反応して他の物質になるためには 高い圧力・温度などの条件が必要であるが、 体を数百度にするは不可能である。 その化学反応をヒトの体温内で行えるのはこの酵素の働きのおかげである (参考「基礎化学」)

COFEE BREAK 〜生物・医学研究〜

生物・医学研究は、 戦時中の日本の七三一部隊や、 ナチスの人体実験などのように ヒトを用いた残酷な実験が行われていた過去がある。 これらの実験は生きたまま細菌に感染 させて様子を観察したり、気圧・温度・X腺・薬物 などを用いて行われていた。 戦後、これら二つのデータはアメリカに 提供され、実験を行った科学者は免罪になった。 ナチスの研究者はペーパークリップ作戦において アメリカに迎えられた。 ナチスが行った人体実験に対しては 裁判が行われ「ニュールンベルク綱領」が出され、 その後、世界医師会によって「ヘルシンキ宣言」が なされた。これらの宣言は、 生物・医学研究を行ううえでの基礎となっており、 実験を行う際には研究内容だけでなく、 倫理的な側面からも検討が行われている。

生殖と発生学

卵といえばニワトリの卵くらいしか馴染みが無いかもしれないが、 卵は調節卵とモザイク卵に分けられ、 調節卵は名前の通り、実験的に"調節"がよく出来る卵であり、 発生の段階のある時期の前に移植した組織はうまく移植先の組織に分化する。 ヒトでは卵巣で作られた卵子と精巣で作られた卵子によって 受精卵が出来、生命が誕生し約280週で誕生する。 このようなものは有性生殖と呼ばれ、対して無性生殖には アメーバなどにみられる分裂、ヒドラや酵母菌にみられる出芽、 胞子生殖、栄養生殖がある。 このように生命が誕生するまでの学問を研究する学問は発生学 と呼ばれており、医学には人体発生学が欠かせない。 (ラングマン人体発生学、ムーア人体発生学などの成書が有名) 発生学で重要な概念の一つが外胚葉、中胚葉、内胚葉という三つの部分で、 外胚葉は表皮(皮膚の表面の層)、神経が発生し、 内胚葉は外胚葉が落ち込んで出来、 肺などの呼吸器系、消化器系の組織が発生し、 中胚葉はそれ以外の骨格、筋肉、腎臓などの組織が発生する。

DNAと遺伝子


ゲノムプロジェクトという 遺伝子配列の解析も終了し、近年は遺伝子・ゲノムが 注目を浴びている。細胞の核の中には染色体があり、 染色体はDNA(デオキシリボ核酸)とタンパクから成り立っている。 DNAの構造はワトソンとクリックにより発表された 二重らせん構造が有名であるが、 DNAの全てが遺伝情報を含んでいるわけではなく、遺伝情報を 含んでいるのはごく一部分(エクソン)だけで、他の 部分(イントロン)は現在の遺伝子発現には関与していないと考えられている。 ヒトの染色体は男性はXY、女性はXXの性染色体と、22対の常染色体から 成り立っており、エラーが起きると様々な症候群が引き起こされる。

神経と受容器・効果器、動物の行動

神経系には情報処理を行う中枢が存在する集中神経系と、 刺激を受け取る受容器から効果器に伝わる散在神経系がある。 ヒトでは 皮膚、眼、耳などといった受容器(実際にはこれらの組織中にある)、 から脊髄または脳に行き、そして筋肉などの効果器に伝わる。 動物の効果器ではシビレエイの発電器官、ホタルの発光器官などがある。 セキツイ動物の神経系は脳・脊髄の中枢神経系と、末梢神経に 分けられ、末梢神経は体性神経(感覚・運動神経)と自律神経(交感・副交感神経) に分けられている。 中枢神経系である脳はよくテレビなどでは、 大脳新皮質と辺縁系に分けられる。 この分類は進化を考えるうえで重要で、 新皮質は学習などに基づく行動、辺縁系は本能・感情を司っている。 また、解剖学的には 創造・学習などの知的行動を司る大脳、 体の調節機能であるホメオスタシス(恒常性)を 維持する間脳、眼球運動・姿勢を司る中脳、体の平衡を 司る小脳、呼吸や心拍など生命維持に欠く事が出来ない延髄がある。 自律神経は基本的には自らの意思では調節出来ないが、 戦いや興奮時の交感神経、逃亡やリラックス時の副交感神経に分けられている。 神経も最初に述べたとおり細胞(神経細胞)で、 神経の単位はニューロンと呼ばれている。 神経細胞ではナトリウムイオンとカリウムイオンという化学的 な反応によって電気的活動が引き起こされ、伝わっていき(伝導)、 そして次の神経細胞に伝わっていく。 これらの神経細胞の間隙はシナプスと呼ばれ、アセチルコリン などといった神経伝達物質の化学的反応により刺激が伝わっている(伝達)、 つまり、神経細胞内は電気的活動、シナプスで は化学的活動であり、化学的活動の方が物質を放出するために時間がかかる (実際にはすごいスピードで行われているが)、 このことからいえることは基本的には 神経細胞一本から出来ている方が反応が早いということで、 長い神経細胞としてはヒトでは1メートル位ある坐骨神経が有名である。 ヒトの脳は神経組織であり、生理学的な意味では感情は神経組織の 電気的活動にしか過ぎないが、 生物の行動には様々なものがある。 生まれつき備わっているものには 刺激に近づいたり離れたりする走性、 本能、反射があり、経験によって得られる行動には試行錯誤、 刷込みといった学習、知能がある。

特徴的な器官と恒常性(ホメオスタシス)

ヒトは実に様々な器官から成り立っている。 生物学の範囲には解剖学・組織学といった学問が含まれており、 実際には人体を構成する様々な器官がそれぞれ特徴的であるが、 ここでは高校の生物学で特に求められる重要な器官と、 体を調節し、生命を営むために欠かせない恒常性(ホメオスタシス)に触れる。 心臓は血液を送り出すために必要な"ポンプ"であり、 通常規則正しく拍動し、運動した時などには交感神経の働きで 心拍数は上昇する。心臓はヒトの場合4つの部屋に分かれており、 魚類、両生類などとは部屋の区切りが異なっている。 血液の循環はヒトは心臓・動脈・毛細血管・静脈と流れ 心臓に戻ってくる閉鎖血管系であるが、軟体動物・節足動物などでは、 毛細血管が無く、動脈の末端が開いており、開放血管系である。 血液は体温を維持したり、酸素と栄養を届けたり、 微生物などの敵と戦うといった機能など様々な機能がある。 酸素は赤血球のヘモグロビンと結合して運ばれ、 成熟した赤血球は核が無く、約120日で壊される。 他に敵と戦う白血球、止血に関与する血小板などがある。 白血球は実際には細かく分けられており、 「微生物とバイオハザード」で紹介したので興味があれば参照して欲しい。 肝臓は再生能力が高い臓器であり、門脈から 運ばれた血液が流れ込み、解毒作用、体温の調節、 尿素の合成(オルニチン回路)、胆汁の生成などの作用があり、 飲み薬やアルコールなどはこの肝臓代謝され、無害化される。 腎臓は左右一対あり、血液から尿を生成するのが主な役割である。 上部には副腎があり、様々なホルモンが生成されている。 体内の状態を一定に保つ恒常性(ホメオスタシス)は 神経性とホルモンによる調節がある。 神経性調節は紹介したように自律神経と副交感神経 の自律神経によって行われ、ホルモンは 下垂体、甲状腺、すい臓などから分泌され、 血糖値、カルシウム濃度の調節なども行われている。

植物の構造と機能、その調節

植物も細胞から構成されており、 基本的な内容は「植物学の基礎」に掲載した。 植物には刺激の方向に近寄ったり離れたりする性質である屈性、 刺激と無関係の方向に運動する性質である傾性などがある。 植物にもホルモンがあり、 成長を促進・抑制するオーキシンなどがある。 植物には昼、夜の長さの影響を受けて花を形成するという 光周性があり、春に花を咲かせる長日植物、 秋に咲かせる短日植物、影響を受けない中性植物がある。

最終章.生物学と謎

今回は生物学の基礎を紹介してきたが、 実際はさらに奥深い学問で、さらに解剖学などのように細分化されている。 このページを元に生涯学習などの きっかけとなっていただければ幸いである。 たとえ文系の方であってもこのページを全て概説出来る ようになれば成書の全体的な内容も把握できるだろう。 生物学…、 様々な研究でいろいろ分かってきたものの、 まだまだ謎だらけであり、 まさにこの学問そのものがミステリーなのである…
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